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最近、スウェーデンでは
「マッピー」 という造語が使われるようになった。英語のMature
Affluent Pioneering Peopleの頭文字だが、スウェーデン語では
「熟年の魅力的なパイオニア女性達」と訳されていて、50歳を過ぎてから人生を楽しみ始める女性のライフスタイルを指している。
語尾に「ピー」をつけて、特定のライルスタイルを生きる人達を表したのには、まず
「ヒッピー」がある。独特な服装で知られるヒッピー族が現れたのは一昔前の1960年代であるが、フラワーパワー、サイケデリックにロック、マリファナなどが、その時代のキーワードであった。
その次に流行った「ピー」
は、「ヤッピー」 だ。1980年代の好景気を背景とする都会の若者間におこった現象である。高学歴で高給取り、高価な都会風ファッションに身を包む若きエリート達が、瀟洒なレストランなどで目立つ存在であった時代である。
それから更に20年たった現在の 「ピー」、「マッピー」
は若者達ではなく、中年女性の生き方であるのが特徴だ。
女性が50歳を過ぎる頃になると、親に躾けられた通りに、人には親切で思いやりをもって接する毎日を送るのに疑問を感じ始める。自分のことはあと回しにして他人に尽くして、代わりに得られたものは何だったのだろう。理想的な妻や完璧な母親としての役割を懸命にこなし、同時進行で行なってきた仕事面でのキャリア追求が一段落した段階で、これは本当に自分が望んだ生き方だったのだろうか、と夢中で駆け抜いてきた人生にふと疑問を感じるのである。
☞ このままよい子であり続けるか?
このまま、自分にかけられた期待通りの
「いい子」 であり続けるべきなのであろうか。
カップル関係でも、離婚したりフリン関係に陥るのがこの年代に多い。一見、円満にみえる結婚生活も、自分を抑えるという犠牲の上にたっているのではないか。自分を殺してまで、結婚生活を続ける価値はあるのかなど、夫婦関係を真剣に考えるのもこの時期だ。ずっとなおざりにしていた自分というものの存在に気付いた時、女性は夫との関係を再考する。一緒に居て楽しい夫ならよい。でも、そうでないのなら別に居なくてもよい、と考えはじめる。いつも回りの人達に気配りをして生きるという、従来からの女性らしさの規範から一歩踏み出し、自分という存在を自覚した時点から、夫婦の力関係にも変化が起こるのだ。
同時に、これまでの人生経験により、何事も完璧というのは難しいということにも気がついているので、絵に描いたような完璧な結婚生活を求めたり、夫という人物にも過度な要求はできないという事を悟っている。ようするに自分達は
「破鍋にとじぶた」 で
あることを悟った段階から、夫との新しい関係がはじまるのである。
☞ マッピーの本音は
つぎに、古くからの女友達のもつ意義を再確認するのもマッピーの特徴である。十代の頃、なんでも話し合える女友達はかけがえのない存在であった。十分に語り合える友人をもつことにより、少女から大人への過渡期を乗り越えたように、マッピーは再び、気のおけない女友達と一緒に、第二の人生の過渡期を乗りきるのだ。
とにもかくにも、マッピーたるものは自分の内なる声に耳を傾け、物分りのよい女性であることをやめて、自分の気持ちに正直に生きることに専念する。同時に、ずっと昔、「いい子」
として生きるために、どこかに仕舞ってしまった長靴下のピッピのようなお茶目心をとり戻すのだ。そしてピッピのように全エネルギーを自分の好きなことに投入するのである。
マッピーのバイブルであるM-Magasinという月刊誌に、「これからが人生の最高峰―50歳になったあなたへのガイダンス」
というリストを見かけた。
- 過去を振り返り、これからの人生の舵取りをするのは自分であることを悟る
- ありのままの自分を認める
- 自分に優しくする
- 他人の目を気にしない
- 周囲の状況に合わせない
- 自分の幸せはなにか、自分が一番よく知っている
- 人間は皆、似たりよったり
- 自分が優秀であることを頑張って証明することはない
そうして、マッピー達は人生をエンジョイすることに専念する。この頃、話題になっているのに、家屋などを抵当にして銀行ローンを組み、死後家屋の売却により決済という新しいローンの形態がある。一昔前の親は、自分は質素な生活をしてでも、子どもに資産を残そうとした。しかし、マッピーは違う。子とも達はそれぞれ自分でやっていくだろうし、自分達で蓄えたものは自分達で使うと考えるのだ。そして残りの人生を、十分にお金をかけて楽しむ。
マッピーは往年のヒッピーやヤッピーと同じように、自分に目覚め、その存在を世間に向ってアピールしはじめている。ただし、ヒッピー達とは違い、マッピー族は流行に左右されることなく、限りなく存在し続けるであろうと思われる。かなりの人生経験を経てきた中年の人間が目覚めたら強い。
☞ 次はおじさんの番?
ところで、このマッピー現象はもうすぐ日本でもみられるかもしれないと思い当たった。2008年度からは、サラリーマンの妻は、夫の同意なしに年金の2分の1分割を申請できる制度が実施されるからだ。そうなると仲良しの女友達と一緒に、日本や外国の街や村を元気に闊歩するマッピー達が、いまよりもっと多く見られるかもしれない。社会制度が人々の人生を左右するという具体例となるであろうか。
このあたりで、おじさんたちも一度立ち止まり、マッピーに中身を変身した人生の伴侶を認め、自分自身を再発見する時期ではないか。お互いに「役割人間」の量を少し減らし、その分、本音で満たせば、またひと味ちがう人生の発見があるかもしれない。それに、お互いに相手を尊敬でき、一緒にいて楽しいカップルなんて素敵だ。
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