「レインボー家族」の人々

                いま、スウェーデンでおこっていること

 

 

2007年の夏、ストックホルムでは、恒例のプライド・フェスティバルが開催された。このお祭りは、異性愛が規範である社会で、オルタナティヴな生き方をするホモやレズたちが、その存在を集団で提示する年一回のイベントである。今年は、このパレードが始まって以来6年目にあたるが、参加者は5万人で、これまでの最高記録となった。パレードを全部見るのに4 時間近くもかかった。

それを路上で見物する「見るアホウ」の方は、その10倍の50万人弱であったとメディアは伝えている。衛星都市を含むストックホルムの人口の3分の1が、このパレードをみた計算になる。

いったいに、ひかえめでシャイなスウェーデン人が、このときばかりはありとあらゆる衣装を身につけ、がんがんと鳴り響くロックにあわせて街を練りあるく。ジムで鍛えた筋肉美を誇る、半裸というより全裸といえそうな人もいる。「異質」であることをおおっぴらにできるこの日は、同性同士が抱き合ってキスをしていても誰も目くじらをたてない。とにかく、5万人の人たちがかもし出すエネルギーは強い説得力となって「見るアホウ」にせまってくる。

 

 ☞ 新しい家族の形が定着している

 

毎年、カミングアウトした男女警官の集団はじめ、その他の職業グループ、政治団体などなど、多種多様のグループが、プラカードなどを掲げて行進する。

なかでも印象的なのは、家族内にホモやレズなどの指向者がいる人たちの一団である。寄り添って歩く母娘らしい女性たちの横を、「私は誇りたかい叔父」と書かれた手製のプラカードなどをもって歩く、ごく普通の市民が毎年かなりいる。家族内の「異質者」を受け入れるだけではなく、それを世間に向かって公表する人たちの行進である。究極の家族愛の表現だと思った。

また、今年、特に目立ったのは、ベビーカーや、子どもの手をひいて参加するレズ・ホモ同士の家族、いわゆる「レインボー家族」の集団であった。スウェーデンではつい最近、異性カップルは医療保険で無料で出来る人工授精が、同性同士にも可能となったせいもあるかもしれない。同性と異性を区別せず、カップルを平等に扱う機会均等を約束する法の制定である。また、同性同士にも適用できるよう現行の婚姻法が改正される日も近い(実際に改正法は20095月1日に施行された)。

 

このグループの中に、5~6歳くらいの子どもたちが数人手をつなぎ、「私たちはレインボー家族の子どもたち!」と無邪気に叫んでいるのを見かけた。女性か、男性かの同性同士で子どもをもつという、従来からの「常識」では考えられない、新しい家族の形が着実に育っているのを、まのあたりにした思いであった。のびのびと幸せそうな子どもたちを見て、周りの無理解にあうこともなく元気に育ってほしいと心から願った。 

それにしてもレズやホモたちの行進が、どうして50万人もの人たちの関心を惹くのであろうか。私には、スウェーデン社会が彼らの存在を認め、ひとつのライフスタイルとして受け入れるまでに成熟しつつあるからだと思える。

 考えてみれば、離婚、再婚、非婚同居カップルが増えることにより、いまではシングルペアレントや、血縁関係のない親子、苗字が2つ以上ある家族など、従来からの核家族同様、家族の形として定着している。離婚した両親の家を、1週間ごとに行き来する子どもは、家族を2つもっているといえるだろう。両親ともが再婚などをしていれば、親は4人いることになる。

 そして、現在、同性両親が定着しつつある。スウェーデンでの家族の多様化はとどまるところをしらないようだ。 

               (2000711月ウイメンズ・ブックストア会誌「ゆう」27

                  号原稿に訂正・加筆)   

 

 

前に戻る  HOME