『スウェーデンの認知症高齢者と介護』より引用 (pp.131-133)
ISBN4-8074-0622-1
2006年11月25日 ノルディック出版発行
下の文章は、スコットランドの一人の女性によって書かれたものです。この女性は、ナーシングホームで
生活していましたが、スタッフ達は、この女性のことを「ボケて何も分かっていない」と考えていました。
女性は、自分ではほとんど何もできませんでした。女性が亡くなってから、彼女が考えを書いたいくつもの
文章が発見されました。
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「看護師さん、あなた達は何を見ているのですか、何を見ているのでしょう。
心の中で何を考えているのですか、私をみてどう思っているのですか。
か弱な年老いた女性で、頭の回転も悪くて、
習慣などもわかっていないようだし、視線もはっきりしていないし、
食事はこぼすし、元気づけても返事もしないし、
何をやっても時間がかかるのでいつまでたっても終わらない。
あなた達が何をしても気が付いていないようで、
しょっちゅう杖を落とすし、まわりに関心がなく、
意志のない人形のようにスタッフまかせ、
食事介助も身体の介助もされるままになっている。
あなた達は、私をみてそう思っているのでしょう。
看護師さん、目をあけて、私をもっとよく見てください。
じっと座っていますが、私は、自分が誰だか話すことが出来ます。
あなた達の言うとおりに移動もするし、食事もしています。
私は、父親も母親もいる10歳の子供で、
私を愛している兄弟姉妹もいます。
ほっそりしたきれいな16歳の少女で、
素敵な男性に出会うことを夢みています。
20歳前に結婚しました − 心臓がドキドキしています、
ずっと守ってきた、結婚式での誓いの言葉を思い出すときに。
25歳の頃 − あの頃はまだ幼い子供たち。
落ち着いた家庭と私を必要としていた子供たちがいました。
30歳になった頃には、子供たちはどんどん成長して、
いろいろ手伝いができるようになりました。
私が40歳になった頃には、子供達は成人になり家をでていきました。
でも、夫はまだ一緒です。人生の喜びはまだ終わっていません。
50歳になった頃には、孫が毎日を忙しくしてくれました、
最愛の夫と私の許に、また小さい子供たちが戻ってきたのです
暗い影が私を覆っています、夫が亡くなったのです。
私の将来は一人ぼっちで淋しい毎日になりそうです。
私の子供達は自分の生活で手いっぱいですが、
楽しかった年月と愛情の思い出は私のものです。
高齢で弱った人間には自然は残酷で、
私を少し気が狂ったようにしています。
今では、私はただの年取った女性で、
体力もなくなり、魅力もなくなってきました。
でも、年取ったこの体のなかには、まだ一人の若い女性が生きている
のです。
時々、私の疲れた心がいっぱいになることがあります。
喜びや悲しみを思い出し、
もう一度人生をやり直すのを愛します。
過ぎ去った年月を思い出します。あっという間にすぎてしまった、
永遠に変わらないものはないという現実を受け入れています。
看護師さん、もしあなた達が目を開いたら、
ただの弱った年寄りばあさんだけではなく、他のものも見えますよ。
もっと近づいてよく私を見てください」
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