スウェーデンの労働組合2009年の現状

 

 スウェーデンの労働組合は高い組織率で知られている。

しかし、ここ数年来、大きな変化が見られる。不況時の1990年度の組織率は85パーセントであったが、昨年の2008年には、71パーセントまでに低下した。

 また、2000年から2008年までの変遷をみれば(表1)、スウェーデンでの組合員の減少率は10パーセントで、10カ国のうちでもっとも高い。

 

そのうちの、はげしい変化は2006年から2008年の2年間におこり、その間6%の組合員を失っている。このよう急激な減少は、ここ100年来の出来事であると、労使関係を研究するルンド大学のシェルベリィ准教授はいう。ふつう、不況期には組織率が上昇する傾向にあるのだが、今回はそうではなく、ブルーワーカー全国組織LOの機関紙によると、本年度2009年に入っても減少が続いている。

 

      表1 国別労働組合組織率

 

2000

2008

  変動(%

フィンランド

76

 71*

-5

スウェーデン

 81

71

   -10

デンマーク

75

70

-5

ノルウエー

53

 52*

-1

イギリス

30

27

-3

ドイツ

25

 18*

-7

日本

21

 18*

-3

ポーランド

20

16

-4

USA

13

12

-1

フランス

 8

  8*

 0

            *2007年度、またはそれ以前

  出所: LO-Tidning (LO-新聞)

 表1でみると、2年間で10パーセントの組合員を失ったとはいえ、国際比較での組織率はノルウエーを除く他北欧諸国と並び、まだまだ高いといえるが、スウェーデン国内での危機感はかなりのものだ。すこし前まで、世界最高の組織力を誇っていたのである。

 

 組織率を産業別に見ると、84パーセントの公共部門とならび、古い歴史をもつ製造部門の組織率は79パーセントと高い。2年間で8パーセントが離脱し、72パーセントとなった建築業界は、経済不況の他に、バルト3国やポーランドなど、新加盟EU諸国からの廉価労働力流入の影響により、労働戦線は乱れているといえる。しかし一番の問題は、流通、小売ならびにその他のサービスセクターである。

 

2 産業別組織率

 

 2006

2008

変動(%

製造業

83

79

-4

建築関連

80

72

-8

卸・小売業

63

57

-6

その他サービスセクター

66

60

-6

民間部門合計

71

65

-6

公共部門

88

84

-4

総計

    77

71

-6

出所: LO-Tidning (LO-新聞)

 

 組織率が5760パーセントであるこれらの職場は低賃金のうえ高離職率、就労者も

若年層が多く、短時間労働や有期契約の労働条件付きが多い。これらの職場での組織率の低さは、とりもなおさず経営側に対する労働組合の力に影響してくる。

 他方、組織率が65パーセントと下降傾向の労働組合と逆に、経営者側では結束度は高く、民間部門の80パーセントまでが経営者団体に加盟している。

 

前出のシェルベリィ准教授によれば、労働条件は中央レベルでの労使間の団交により決定される、いわゆるスウェーデンモデル注1が有効である今日では、高い経営者の組織率は、団交の決定条件が多くの企業によって守られるので望ましいことである。

 しかし准教授は、長期的には組合の組織力の弱い部門から切り崩しにあい、労使間の力のバランスに変化がおこるであろうと続けている。すると労働者組織に一部欠損が生じ、スウェーデンモデルが機能しない部門が出てくる可能性を指摘している。しかし、准教授が本当に言いたいのは、さらにその後に起こり得る状況ではないかと疑ってしまう。

 

 ☞労働組合を内部から崩壊させる

組織率低下の原因としてあげられるのが、組合費の引き上げである。

2006年秋に穏健党を中心とする保守系4党連合に政権が移行直後、失業保険制度の改革がおこなわれた。具体的には失業保険の個人負担分の大幅引き上げである。結果として、それがリンクされている組合費[1]が大きく跳ね上がり労働者の財布を直撃したのである。

もともと、低率である低所得層ならびに雇用期間に制限のある雇用者層の組織率は、この改革による組合費の引き上げによりさらに追い打ちをかけられた。低所得者にとっては、わずかでも手元に残るお金が少なくなるのは痛手である。将来の失業の心配より、毎月の財布の厚みのほうが切実で、多くの人が組合を離脱していった。

 

 産業経済界、高所得者層をバックにもつ穏健党のイメージは、もろに「金持党」である。しかし、2006年の総選挙では、我々は「新しい労働党」であり、労働者の味方であると選挙運動を推進させ、長年続く社民党支配に飽きた市民の関心をかった。穏健党は、従来からの労使関係を存続させると公約したが、強力な組合組織を崩すのに、巧妙にも組合員自らが組織から離脱というかたちによる、内部からのひび割れ自滅崩壊させる戦術をとったのである。

 

組織率低下のその他の要因としては、若手労働者の意識と、産業構造の変遷が挙げられている。前者については、若者は以前のように労働者としての連帯観からではなく、「組合から何を得られるか」を基準に判断するとシェルベリィ准教授は指摘している。後者の産業構造については、重点が製造部門からサービス部門に移行していることだ。現時点で組合規模トップ10の内、7までがサービスセクターなのである。この部門は先にふれたように組織率が低い。

 

組合内部からの自省の声も聞かれる。民間事務職を組織するTCOのトップ、スチューレ・ノウドは、スウェーデンモデルの危機を憂い、時代の変遷に対応する組合組織の体質改善を呼びかけている。確かに、組織のトップと底辺の労働者の間の距離が大きいのは事実で、それも組合離れに一役買っているのではないかと思われる。

1 スウェーデンモデルは、ごく簡単には、労使が対等な立場で協調し産業を発展させ、それにより得た利益は国家により福祉として市民に返還されるという構想。すでに1938年にその布石がおかれている。

 伝統的に労働組合が失業保険の個人負担金の徴収や、失業手当金の支払いの業務を行っている。

 

(連合「労働調査」20010月号掲載に訂正・加筆)

 

 

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