スウェーデン「連合」に女性委員長誕生

 

スウェーデンのブルーカラー労組連合LO (Lands Organisation) に、初の女性委員長が誕生した。20009月、LOの総会で対立候補者なし、満場一致で選出されるという画期的な出来事であった。1898年に設立以来、102年目に始めて女性が13代目のLO委員長として組織のトップに立ったのである。
  LO
は全国組織労働者の半数以上を擁するスウェーデン最大の労働組織である。伝統的に木材、金属などの製造業や運輸関連など、いわゆる 「男性職」 に従事の労働組織であったが、社会福祉の充実につれ、1970年代から医療や高齢者・児章福祉などに従事の女性組合員が急増した。福祉のみならずサービス産業の拡大と共に、この分野の女性就業者も増加、LO傘下の18産別組織(合併により2009年では1)のうち、商業、ホテル・レストラン、地方自治体、社会保険などは女性が圧倒的多数を占めている。

 約170万人の組合員のうち 2007年)、女性数はほぼ半数に近い。この数字を見ると、一家の稼ぎ手である男性の敵だと、労働組合が女性労働者を排斥した時期はほんとうに歴史となってしまっているのが分かる。とどのつまり、今回の女性委員長誕生は産業構造ならびに就労形態、意識変化の三つ巴による変化の結果であり、歴史的な必然性によってと言えるだろう。

 ☞ 委員長はどんな女性?

ここで上にあげた三つ目の意識の変化を含め、状況をもう少し詳しく考察したい。

 スウェーデン社会でも、他欧米社会同様、1960年代終盤から左翼旋風をへて、多くの女性たちが一個の市民としての自分を意識し始めた。女性運動が起こり、彼女達は教育と職業へのアクセスを要求した。好景気も幸いし、高福祉高負担政策により社会化された高齢者並びに児童福祉は、女性たちを家族のケアーから解放し、収入をもたらす職場を提供した。こうして1970年代に専業主婦必須の 「男ソト女ウチ」 社会から、男女共に職業を持つ 「ダブルインカム」 社会に変革をとげたのである。以来、遅々とではあるが社会の様々な場で要職に就く女性が増加中である。
 元准看護師ヴァニヤ・ルンドビィ=ヴェディンが労組委員長として登場したのもその一環であろう。ちなみに彼女は1952年生まれで、48歳にして現職に就いた。スウェーデン人にしてはやや小柄、全体に柔和な感じがあふれている。これからの新しい指導者タイプの一典型であろうか。

 ヴァニヤさんとはたまたま旧知の仲で、お祝いを兼ねてインタビューする機会を得た。以下はそのダイジェストである。

  Q
女性であるあなたが選ばれるのに反対はなかったのですか。
  A
全然ありませんでした。 LO最大の金属労連やその他の単産からも全面的に支持を受けました。

  Q それは、女性を持ち上げるのが今流行だからでしょうか。
  A
いいえ、そんな事はありません。 確かに女性であることはマイナスではなくなりました。でもそれだけでは充分ではなく、トップにたつにはそれなりの実力が必要です。私はこれまで1994年から6年間副委員長として働いてきました。その時の実力を認められたのです。

  Q
あなたの委員長としての特徴はなんでしょうか。
  A
平等な社会を理想とする組織の委員長として、民主的な態度が大切だと思っています。つまり上から命令するのではなく、人の話を良く聞き、充分な話し合いをするのです。その上で決定を下すのを躊躇しませんし、必要であれば衝突も受けてたつ覚悟もあります。

  Qあなたは委員長に選出後の初演説で、LOはフェミニストの組織だと言われましたが、その意味は。
  A
これからの労働組合運動は、これまでの階級と人種差別との闘争に限るべきではありません。性差別をなくし、平等で公平な社会をつくるには、私たちはフェミニズムの視点が必要なのです。フェミニズムは男女間の性差を、男性と女性の間に支配・被支配という上下関係を正当化するために、人為的・社会的に創り出されたものと見ています。誰もが職業を選ぶ権利と、自分の仕事の価値を公平に評価される権利を持つべきだと思います。フェミニストとはこういう意見を持つ人の事で、LOもそのような組織なのです。

  Q
 でも基木的に男女問に差はあるのでは。
  A
ありません。勿論女性は産む性であるとか、男性は体力的に勝るとかの生物学的な違いはあります。しかし、それを社会的な不平等の根源にしてはならないのです。性の違いに優劣をつけ、一方的に職業選択の範開を狭めたり、家族責任を押し付けてはならない、と思います。男女どちらの性であっても仕事を選べ、家庭を築くことが平等に出来るべきです。その意味での男女差はまったくありません。

 ☞ 今は誰もがフェミニスト

うーん、なるほど。現政権担当の社会民主党も200011月初旬にあった党大会でフェミニスト党であることを宣言した。そういえば、左翼党 (旧左翼共産党) は大分前に、フェミニスト党宣言をしている。それ以来、この党の支持率は増加の一途をたどっていて、少なくない数の社民党支持者がそちらに移行の傾向にある昨今である(その後、コンサバな保守党の党首まで「フェミニスト宣言」をしてメデイアでかなりからかわれた)。左翼党女性党首は、頭脳明晰な点で右に出る政治家はゼロで、おまけに、容姿端麗とくる。有名女性の人気投票では、皇室女性などと常に首位を争っている。
  
フェミニストといえば、女性に花やチョコレートを贈る親切な男性を意味した時代もあったが、今は総フェミニストの時代になりつつあるようだ。

(連合「労働調査」200012月号掲載に訂正・加筆)

 

 

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